糖質制限をすると危険?!体重は減るけど寿命も減る?!ケトン食とは?
絶賛流行中ですよね。糖質制限食。
最近はどこへ行っても「ご飯は食べない」とか、「ダイエットのために糖質はとらないようにしている」とよく聞きます。
そこで今回は管理栄養士の筆者が『糖質制限食(炭水化物ダイエット)の安全性と危険性』についての事実をまとめ、考察してみることにしました。(自問自答し葛藤しています)
🔶糖質制限
太っている芸能人がやせるCMでおなじみの、ライザップも、糖質制限を指導しています。
ライザップの減量プログラムは、週に2回激しいトレーニングをして筋肉を作り、普段の食事はご飯を抜いて、おかずをたっぷり食べましょう、というスタイルでボディメイク術を指導しているそうです。
病的な原因や薬の副作用、遺伝的な原因もありますが、基本的には次の三つになります。
1.糖質のとりすぎ
糖質をとって血中の糖分(血糖値)が上がると、血糖をコントロールするためにインスリンというホルモンがでます。
このインスリンが、体の中で脂肪を作ります。
「糖質制限ダイエット」が騒がれているのはこのためです。
2.カロリーオーバー
人の体脂肪が増える原因のもう1つが、一日に使うカロリーよりも食べるカロリーの方が多いためです。
余ったカロリーは、体脂肪として蓄えられます。
もちろん糖質だけでなく、たんぱく質や脂質にもカロリーはあるので、食べすぎたら太ります。
特に脂質は、1g当たりのカロリーが、糖質やたんぱく質の倍はあるので、脂質の多い食べ物を食べるとカロリーが過剰になります。
3.朝食を抜く、夜食を食べるなど、食べる時間が悪い
寝る前に食事をすれば、食べた分のカロリーは使われずに脂肪になります。
朝食を抜けば、体が飢餓状態になるので脂肪をため込みやすい体質になります。
糖質は脳のエネルギー源となったり、人の力になります。車で例えると、ガソリンのようなはたらきをします。
このガソリンが余れば、脂肪になります。昔の人は食糧が十分ではなかったので、余った糖質が生命を維持してくれました。
そして何より、私たちに幸福感を与えてくれます。
ご飯、麺、スイーツ、ミルク…全部おいしいです!
一昔前は『男は甘いものを食べない→酒が強い→俺カッコいい』みたいな暗黙の風習(?)のようなものがありましたが、
最近の男子って結構甘い物食べるんですよね。
実は甘い物を食べると、「ドーパミン」や「β-エンドルフィン」「セロトニン」などの神経伝達物質が出ます。
これらは、人に幸福感を与える作用があります。
甘いものを食べると気持ちが良くなるのはこのためです。
/シアワセデス!\
試しに私もやってみました。糖質制限食。
まず、ごはんや麺などの主食とお菓子を食べるのをやめました。
すると、みるみる体重が落ちること。
1日に100g~200gくらいずつ落ち、1週間で2kg近く落ちました。
即効性があります😨
ボクシングなど体重をコントロールしないと試合に出られないような人には、一時的な糖質制限はいいかもしれません。
「糖質制限をすると体重が落ちるのは確かだけど、落ちているのは脂肪ではなく水分。」
という話を耳にすることがあるかもしれません。
肝臓や筋肉には、糖分(グリコーゲン)が蓄えられていますが、そこには水分も一緒に蓄えられています。
血液中の糖分が減って、体が糖分不足を感じた時に、肝臓や筋肉の糖分が使われます。
肝臓や筋肉の糖分が使われれば、一緒に蓄えられた水分も一緒になくなるので、その分体重が落ちます。
蓄えられている糖分1gにつき、水分は3g程度一緒に蓄えられているので、糖分が100g使われれば、水分が300g減り、合計で400g体重が減ります。
肝臓に蓄えられる糖分は、人によって差はありますが100g前後、
筋肉に蓄えられる糖分は、だいたい300g前後なので、
肝臓と筋肉の糖分合わせて400gが使われ、更に一緒に蓄えられている水分が1200gなくなったとしたら、合計で1600g、つまり1.6kg体重が落ちる、ということになります。
これが、糖質制限をするとすぐに体重がおちる理由です。
ただし、肝臓も筋肉も合わせて400gくらいしか糖分を蓄えられないため、糖質制限をして体に蓄えられている糖分と水分が失われたとしても、せいぜい2kgくらいしか落ちません。
「糖質制限をして10kg体重が落ちた!」という体験談があるかもしれませんが、こういった人たちは、糖質制限をしながらいつの間にかカロリー制限をしていることが多いです。
ちなみに私も糖質制限をしてみましたが、ご飯の量が減るので、食欲がなくなり、一日に食べるカロリーが減りました。
よく考えてみてください。ついつい食べ過ぎてしまう時って、ご飯や麺が進む時ではありませんか?
お寿司がおいしい!
カレーがおいしい!
ラーメンがおいしい!
カツ丼がおいしい!
牛丼がおいしい!
スイーツがおいしい!
食べすぎた!!!
それは糖質のとりすぎだったりするのです。
ちなみに、「糖質制限をすると筋肉を分解してアミノ酸に変えて脳に送る。その時に水分を使用するので、体重が落ちる。」という話もありますが、この説には根拠がありません。
肝臓や筋肉に蓄えられている糖分がなくなると、自分の体で糖を作り出します。
具体的には、筋肉や脂肪などからエネルギーのもとがつくられます。
体が飢餓状態になると、筋肉が分解されて糖が作られます。こういった体内の経路のことを「グルコース・アラニン回路」と言います。
筋肉が分解されると、もちろん筋肉が落ちます。
筋肉が落ちると基礎代謝が落ち、やせにくい体質になってしまいます。
「絶食ダイエットはキケン」と言われるのはこのためです。
脂肪が分解されると、「ケトン体」が作られます。
今回の記事のキーワードの1つですね。
ケトン体とは、「β-ピドロキシ酪酸」、「アセト酢酸」、「アセトン」の総称のことを言います。
かつては、「脳のエネルギー源はブドウ糖のみ」と言われていましたが、今はケトン体も脳のエネルギー源になることが分かっています。
徹底した糖質制限食を行うことでケトン体をエネルギー源とする食事は「ケトン食」と呼ばれています。また、ケトン体を使う生活のことを「ケトジェニック」と呼ばれているようです。ケトン体を利用して病気を治す治療法を「ケトン食糧法」と呼ぶ先生もいます。
ちなみに「ケトン体食事法」とは、福田一典医師による独自の食事法で、糖質制限と決まった脂肪の摂取を組み合わせたもののことを言います。
他にも自力でエネルギーを作り出す方法はあるのですが、長くなってしまうので、
をご覧ください。
いくつか糖質制限とケトン体に関する書籍を読んだので、部分的にピックアップします。
食後高血糖と高インスリン血症は、なぜがんを引き起こすのか。そのメカニズムはまだ完全に解明されたわけではありませんが、次のように推察されます。
食後高血糖は、「酸化ストレス」を高めます。その酸化ストレスは遺伝子のミスコピーを誘発しやすく、そこから、"がんの芽"が生まれるのです。
(中略)
そして、がんの細胞の大好物は血糖(ブドウ糖)です。(中略)
糖質制限では通常より血中のブドウ糖が増えませんから、がん細胞の成長を抑えて、その増殖にストップをかけてくれるのです。人類最強の「糖質制限」論/江部康二/2016/SB新書より引用
※推察なので今のところ定かではないようです。
過剰な糖質摂取はアルツハイマー病による認知症のリスクを高めます。人類最強の「糖質制限」論/江部康二/2016/SB新書より引用
ケトン体には、抗炎症作用や細胞保護作用があります。
さらに、ケトン体が細胞のオートファジー(自食作用)を活性化して、細胞内に蓄積する老化したたんぱく質を分解して除去してくれます。
つまり、細胞を若返らせてくれるのです。やせる!若返る!ケトン体食事法/福田一典/2016/洋泉社より引用
つまり簡単にいえば、
①糖質制限をすると痩せるので、生活習慣病のリスクが下がる
②食後高血糖にならないので、がん細胞の増殖を抑制する
③食後高血糖にならないので、アルツハイマー病を防ぐ
④ケトン体は体を守ってくれる
⑤ケトン体はアンチエイジングの効果がある
という感じです。
「糖質制限」を推奨している先生たちは、エビデンス(実験や統計の結果)をもとに自信をもって食事法を提唱しています。
そして「糖質をとることのデメリット」も取り上げ人々を納得させています。
また、「糖質制限」によって体重・体脂肪率が落ちたと言う人が世の中にたくさんいるので、この話を聞いて信じる人がたくさんいます。
また、カロリー制限をしたのに痩せられなかった人が"一般的なダイエット法"に反発しているのもあると思います。
一方で「糖質制限否定派」は、栄養学をしっかり勉強してきた忠実で真面目な人達なのだと思います。
私も大学生の頃、
「炭水化物は一日のエネルギーの半分以上とることがバランスのよい食事」
「炭水化物が不足すると体が動かなくなる、低血糖になる、脳が働かなくなる」
「ケトン体が出過ぎるとケトアシドーシスになるから危険」
と、さんざん勉強させられました。
なので「頑張って勉強したことが実は間違っていた」「教科書に書いてあることや先生たちが言っていることがウソだった」なんて思いたくないのです。
私もどちらかと言うと(出来は悪かったですけど)真面目な方でしたから、なんとなく「糖質制限」に反発したい気持ちが湧いてきます。
だって、栄養学科で勉強したんだもん。。
上にもチラっと書きましたが、理由はいくつかあります。
糖質制限を行うと必ずたんぱく質を多く摂る食生活になります。
たんぱく質を多くとるということは、腎臓のろ過機能を今までよりも働かせなければならなくなるので、腎臓に負担がかかると思われます。
この根拠としては、日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン-「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」にて、
"CKD(慢性腎臓病)患者の人は、進行を抑制ためにたんぱく質をの摂取量を制限することが推奨される"
ということが書かれてるためです。
一般的に食べている食事のたんぱく質が腎臓病の進行に影響を及ぼすのであれば、
一般的な量の倍以上ノたんぱく質を摂取することになる糖質制限食が腎臓に負担をかける可能性はある、ということです。
ちなみに糖質制限の先駆者である江部先生は「たんぱく質は食べ過ぎても問題はない」とおっしゃっています。
しかし私はイチ管理栄養士として「たんぱく質を食べ過ぎても絶対に大丈夫」とは言い切ることができません。
また、糖質制限食を行うと脂質の摂取量が増えます。
脂質はカロリーが高いので、糖質制限を行うことによって今まで食べていた量よりもカロリーが高くなってしまい、結果的に太ってしまう、というケースもあるようです。
「日本人の食事摂取基準2015年版 策定検討会報告書(厚生労働省)」という冊子にはこう書かれています。
たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMIの増加などがあげられる。たんぱく質と糖尿病発症リスクの関係を認めた研究並びに、最近の系統的レビューでは、これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。日本人の食事摂取基準2015年版 策定検討会報告書(厚生労働省)より引用
「たんぱく質エネルギー比率20%」というのは、簡単に言えば"普通の食事よりもたんぱく質の割合が多い食事"ということです。
科学的根拠をあげることはできないけど、絶対安全とは言い切れないと言っています。
ケトアシドーシス・ケトーシスが危険?
私は大学時代に「ケトン体が出過ぎるとケトアシドーシスになって危険。最悪、死を招く」と習ったので、ケトン体にはかなりのマイナスイメージがありました。
糖質制限を推奨していないお医者さんもそういった認識を持ってます。
しかし、「糖質制限食」を推奨する先生達によると、実は危険なのは主に1型糖尿病の人(先天的にインスリンの分泌がなくなる病気)だけのようです。
インスリンの分泌に問題がない普通の人は、ケトン体の血中濃度が極端に上がることもないし、仮にケトン体がたくさん作られても全く問題がないと声を揃えています。
というような内容の本を出版したり、世間に主張していた人たちが亡くなっています。
フジテレビの「テラスハウス」という番組に出演し、人気になりました。糖質制限によりダイエットに成功し、「100kgだったボクがポジティブになれたやせごはん」というレシピ本を出版しています。
・マッスル北村さん(39)…急性心不全
20kgの急な減量を行った結果、異常な低血糖状態となり、急性心不全を引き起こし死亡したそうです。飴の一個でも口にしなかったみたいなので、まったく糖質をとっていなかったのでしょう。体脂肪も底を尽きてケトン体すら出ない状態だったのでしょうかね?
・飯野賢治さん(41)…高血圧性心不全
「炭水化物抜きダイエット」を実践して減量に成功した後の死だったようです。
・前田健さん(44)…虚血性心不全
亡くなる3か月前に、twitterで「炭水化物抜きダイエット」をしていると明かしていたようです。
・桐山秀樹さん(62)…心不全
糖質制限により20kgのダイエットに成功し、「おやじダイエット部の奇跡」という本を出版しベストセラーになっています。
・宮本美智子さん(51)…急性多臓器不全
1995年に糖質制限を基本とする独自のダイエット法「世にも美しいダイエット」という本を出版しています。
・ロバート・アトキンスさん(72)…転倒死
アメリカ人で循環器学者の医師です。
1999年に「Dr.Atkins' New Diet Revolution」という本をアメリカで出版した後、日本でも翻訳されたものとして「アトキンス式低炭水化物ダイエット」という本を出版し、ブームになっています。
「アトキンス式低炭水化物ダイエット」によって50kg近く減量したものの、晩年にはリバウンドしてしまい元の体重に戻っていたようです。
死因は「転落死」なので、直接糖質制限が関わっていないように見えますが、実は心臓病を患っていたようです。
原因は明かしていないものの、「炭水化物ダイエットをしていた」ということがまことしやかに噂されています。
糖質制限をしても元気な人もいます。それでも懸念される理由は次の通り。
ツーンとした匂いです。
続かない
上記でも少し触れましたが、ロバート・アトキンスさんによる「アトキンス式低炭水化物ダイエット」はアメリカで物凄いブームになりました。
なんと北アメリカに住む成人の7人に1人が「アトキンス式低炭水化物ダイエット」を行っていたらしいです。
当時は炭水化物が多く含まれている食事の売り上げが大幅に落ち込み、社会現象となったようです。
しかしその後のアトキンスさんの転落死や、このダイエット法の長期的な安全が保障できないという報告から次第にこのダイエット法を行っている人が次第に減っていってしまったそうです。
このアトキンスダイエットを行っている人が減った理由は、「効果がなかったから」か、「体に悪いかもしれないから」か、「食べたいものを食べたいから」からのどれかでしょう。
理由は人それぞれかもしれないですが、やっぱり人って炭水化物が大好きなんですよね。
過去に「DIME」という雑誌で、作家の羽田圭介さんの2ヶ月間で3kgやせたRIZAPでのボディメイク体験談が特集されていたのですが、感想としてこんなことが書かれていました。
始めてからわかったのですが、痩せるためには運動よりも、食事が重要だということ。糖質制限のつらさは予想がついていたのですが、シビアにやってみると大変でした。
(中略)
まず自分の意思であそこまでの糖質制限を続けるのは難しかったです。反動でカルボナーラを一気にパスタ3束分で食べたり、炭水化物を摂取しまくりました。そうしたら、2か月くらいで元の体重に。ライザップには糖質制限をゆっくり戻すというプログラムもあるけれど、そこに追加でお金を払うというのもなと私は思いましたDIME 2017 11月号-作家・羽田圭介さんが明かすRIZAP〝壮絶〟体験記-より引用
2ヶ月かけて頑張ってダイエットをしたのに、反動による食べすぎのせいでまた元の体重に戻るなんて意味ないですね…😭
やっぱり人っていう動物は、我慢したら、後で反動がやってくるものなのです。
糖質を抜くのが苦ではない人なら簡単に成功できるかもしれないですが、子どものころから炭水化物を中心にした食生活をしてきた多くの人には、糖質制限はかなり過酷な食事制限なのかもしれません。
京都大学名誉教授の森谷 敏夫氏はこう話します。
心電図と自律神経の解析では、高脂肪食を食べたときに、交感神経活動が非常に高くなりました。心臓にとっても、非常に不整脈が出やすい状態をつくりだすことが分かっています。通常の女子学生でそうですから、心臓が弱ってきてる、動脈硬化が進んでる方が高脂肪食をとって炭水化物を減らしてしまうと、心臓に対しての負担も非常に大きくなる可能性があります。おせっかい倶楽部-特集-ほんとうのところ「糖質制限」ってどうなんですか?より引用
やはり「可能性」なので、糖質制限を推奨する人には「エビデンスがない」と論破されてしまいそうですが、ただエビデンスがないだけで、絶対に森谷先生がでたらめを言っているということにはなりません。まだ証明はされていなくても可能性があるかぎり、リスクはあるのです。
あの「ホリエモン」さんが刑務所から出てきたときはスリムになっていましたよね。
刑務所の食事は、普通にご飯が出てきます。
同じように、しばらく入院して病院食を食べていた人もスリムになります。
もちろん病院食も、一般的な栄養学科で栄養学を学んだ栄養士が立てる献立であれば、ご飯は出ます。
普通は炭水化物の量が全体エネルギー量の50%以上になる献立を作ります。
すなわち糖質制限食ではありません。
それなのに痩せます。
それは決まった時間に「カロリー制限食」を食べているからなのです。
だから、逆に言えば、
①寝る前など変な時間に食事をする
②病院食とは程遠い食事をする
ことが一番の問題なのです。
「そんな決まった時間に、たいしておいしくないものなんか食べたくないよ!」
って思いましたか?
それが痩せられない原因なんです。
そして、糖質制限食にたどり着きます。
糖質悪者説を信じることが悪いとは言っていません。
確かに精製糖は私も良くないと思います。
ただ、長期間にわたって糖質を全くとらないという食生活は、やりすぎだと思うのです。
糖質制限の先生たちは、「糖質を全くとらなくても大丈夫だ」とおっしゃっていますが、
私の口からはそのようなことは、責任を持って言うことはできません。
WHOが提唱している糖の制限とは、「糖質」のことではない
世界保健機関(WHO)は「1日当たりの遊離糖類摂取量を25グラム程度にすると抑えるなら、更に健康効果は増大する」としています。
ここで勘違いされやすいのですが、遊離糖類とは、ごはんやパン、麺などのことではありません。
たしかに「遊離糖類」は、分子が小さいので摂取すると急激に血糖値をあげるため、体に悪影響を及ぼします。
いわゆる「糖質制限食信者」ではない私でも、なるべく食べないようにした方がいいものだと思っています。
ここで注意していただきたいのは「WHOが糖類が危険と言ったから」といって、糖類全部を一緒くたにして主食や果物まで抜く、ということはWHOの意図からズレることになるということです。
「糖質制限-ケトン体」を勧める先生たちの本を読んでいると、確かに科学的であり、エビデンスもしっかり書かれているので、「本当に糖質をまったくとらなくてもいいのかもしれない!」という感覚になります。
ただ、栄養学というものは、まだまだ分かっていないことも多いのが現状。
もしかしたらあと10年もたてば、「糖質制限をしたら本当に危ない」という報告が上がっているかもしれません。
糖質制限を唱える先生たちは声をそろえてこう言います。
「原人は肉を主に食べており、糖質はほとんど手に入らなかった。イヌイットの人たちも肉食。だから糖質をとらなくても人は生きていける――」
たしかに糖質は人の体内でつくられますし、糖質が枯渇したらケトン体が作られるので、人は生きていけるでしょう。
しかし原人やイヌイットの人たちの寿命は決して長くはありません。
医療の発展が進んでいない時代・環境という理由もあるかもしれませんが、今の日本の高齢者の方々が生まれた時も、今ほど医療は発達していませんでした。
現代のおじいちゃんおばあちゃんたちは、戦中・戦後を生き抜いてきた人たちです。
彼らが若かった時代は、今のように食べ物が豊富にあったわけではなく、玄米やイモを主食にしていました。
精白米が簡単に食べられるようになってからも、あまり肉類は手に入らないので、畑でとれた野菜などを長期的に保存できるように加工し、おかずは少しで、米を中心にして食べていました。
"大盛りのご飯に梅干し一つ"という食事も珍しくなかったようです。
でも日本は世界ランク上位をキープする長寿大国です。
私たち日本人のおじいちゃん・おばあちゃんたちは、お米を主食として食べても大丈夫であることを証明してくれています。
でも脳だって使わなければどんどんボケてきちゃいますよね。
絶対に大丈夫!!!とは言い切れません。
糖質制限をして体重が落ちた人が目立っていますが、実際のところは糖質制限をしても体重が落ちなかった人、糖質制限自体出来なかった人もたくさんいます。
また、実際にカロリー制限をして痩せられた人もたくさんいます。
多くのヒトは、高濃度のビタミンAを代謝することができませんが、生肉などからビタミンAをたくさんとる習慣のあるイヌイットの人たちだけは、高濃度のビタミンAを代謝する能力を持っているそうです。
もしかしたら私たち日本人もそういった個性的な能力があるかもしれません。
※2018.9.26追記
早稲田大学の服部正平教授らが日本人106人の腸内細菌叢を解析したところ、日本人の腸には炭水化物を分解する細菌が他の国よりも多いことがわかったそうです。
(早稲田大学-健康な日本人の腸内細菌叢の特徴解明、約500万の遺伝子を発見 平均寿命の高さや低肥満率等との関連も示唆より)
なので、私たちの祖先がこれまでずっと続けてきた食生活のパターンをガラッと変えてしまったら、もしかしたら何か不具合が起こってしまうかもしれません。
こんなことを書けば、「また根拠のない話を」と言われてしまうかもしれませんね…
こんな感じで、糖質制限否定派の先生たちの主張も、江部先生に論破され、「根拠がない」とスッパリ切り捨てられています。
でも、繰り返しになってしまいますが、栄養学はまだまだ未知なことばかりで、国民みんなで人体実験をしている状態です。
マーガリンのトランス脂肪酸だって、今となっては「体に悪い」と言われていますが、昔は「植物性の油だから体にいい、コレステロールを下げる」と言われている時代もあったのですよ。
今の高齢者の方たちとは違って、私が子どもの頃は、大好きなジャンクフードをたくさん食べて育ってきたので、もしかしたら80歳まで生きられないかもしれません。
私のように、ジャンクフードを食べて育った人や、
健康・ダイエットために糖質制限を徹底して過ごしている人、
「豊胸サプリ」など、よくわからない栄養素が入っているサプリを飲み続けた人…
その人たちが20年、30年後、どうなっているのか、先のことは未来に行ってみないとわかりません。
内容は、
①朝・昼は普通にご飯を食べて、夕食は主食を抜く。
②お菓子は基本食べない。食べても1週に1度。
③果物はビタミンや抗酸化物質でアンチエイジング・美肌効果がるので毎日朝か昼に食べる。
という感じです。
元々自分自身がご飯・麺・パン・お菓子大好き人間なので、制限でもしていないとついつい食べ過ぎてしまうんですよね。
たとえばラーメンに餃子、白ご飯なんて最高です。
でもやっぱり1日に食べるべき糖質の量にも限度というものがあるので、食べ過ぎたらもちろん栄養が偏ります。
なので、糖質の食べ過ぎ防止のためにプチ糖質制限を行っていきたいと思っています。("極端な糖質制限信者"にならないことは敢えて強調しておきます)
晩御飯は主食を抜く、という決まりを作りましたが、人と食事に行くときは食べます。
そして1日のエネルギー摂取量の50~60%を糖質からとる、ということは変えずに生きていきたいと思っています。
この記事を書いてから6か月経ちました。
なんと、2か月目あたりから晩御飯に糖質を摂らない生活に耐えられなくなり、食べるようになりました。米、おいしすぎる。。
ええ。お菓子も食べましたよ。甘いもの。大好きです。ちょっとね…食べないのは無理です。特に生理前後の甘いもの欲求は尋常じゃないんですよ。
でも体重は5kg減りました。
明らかに前の生活と変わったことは、「満腹状態で寝ない」ということです。
やっぱり人間、好きなものを我慢するとツライし、反動が来ます。
なので個人的には、「糖質制限」よりも「時間栄養学」の理論の方が心にも体にも良い効果があると思います。
詳しくは↓
最近はどこへ行っても「ご飯は食べない」とか、「ダイエットのために糖質はとらないようにしている」とよく聞きます。
そこで今回は管理栄養士の筆者が『糖質制限食(炭水化物ダイエット)の安全性と危険性』についての事実をまとめ、考察してみることにしました。(自問自答し葛藤しています)
🔶糖質制限
もくじ
・あのライザップも糖質制限食
・そもそも人はなぜ太るのか
・糖質の役割
・糖質制限をすると、体重が減った!
・すぐに体重が落ちたのは脂肪が減ったからではない?何が減った?
糖質制限で落ちるのは水分であるといわれる理由
・糖分が体からなくなったらどうなるのか
・なぜケトン食が良いと言われているのか-糖質制限食のメリット
・なぜ「糖質制限派」と「糖質制限否定派」で意見が真っ二つに割れるのか
・糖質制限食が危険と言われる理由
糖質制限食をしていた有名人が何人も亡くなっている
・なぜ糖質を制限すると心臓疾患になりやすいと言われるのか
しっかり糖質をたべていても、痩せるもんは痩せる
・WHOが提唱している糖の制限とは、「糖質」のことではない
・筆者の個人的な考え
人の体は環境や食生活によって変わっていく
今後筆者はどうするのか
・あのライザップも糖質制限食
・そもそも人はなぜ太るのか
・糖質の役割
・糖質制限をすると、体重が減った!
・すぐに体重が落ちたのは脂肪が減ったからではない?何が減った?
糖質制限で落ちるのは水分であるといわれる理由
・糖分が体からなくなったらどうなるのか
・なぜケトン食が良いと言われているのか-糖質制限食のメリット
・なぜ「糖質制限派」と「糖質制限否定派」で意見が真っ二つに割れるのか
・糖質制限食が危険と言われる理由
糖質制限食をしていた有名人が何人も亡くなっている
・なぜ糖質を制限すると心臓疾患になりやすいと言われるのか
しっかり糖質をたべていても、痩せるもんは痩せる
・WHOが提唱している糖の制限とは、「糖質」のことではない
・筆者の個人的な考え
人の体は環境や食生活によって変わっていく
今後筆者はどうするのか
あのライザップも糖質制限食
太っている芸能人がやせるCMでおなじみの、ライザップも、糖質制限を指導しています。
ライザップの減量プログラムは、週に2回激しいトレーニングをして筋肉を作り、普段の食事はご飯を抜いて、おかずをたっぷり食べましょう、というスタイルでボディメイク術を指導しているそうです。
そもそも人はなぜ太るのか
病的な原因や薬の副作用、遺伝的な原因もありますが、基本的には次の三つになります。
1.糖質のとりすぎ
糖質をとって血中の糖分(血糖値)が上がると、血糖をコントロールするためにインスリンというホルモンがでます。
このインスリンが、体の中で脂肪を作ります。
「糖質制限ダイエット」が騒がれているのはこのためです。
2.カロリーオーバー
人の体脂肪が増える原因のもう1つが、一日に使うカロリーよりも食べるカロリーの方が多いためです。
余ったカロリーは、体脂肪として蓄えられます。
もちろん糖質だけでなく、たんぱく質や脂質にもカロリーはあるので、食べすぎたら太ります。
特に脂質は、1g当たりのカロリーが、糖質やたんぱく質の倍はあるので、脂質の多い食べ物を食べるとカロリーが過剰になります。
3.朝食を抜く、夜食を食べるなど、食べる時間が悪い
寝る前に食事をすれば、食べた分のカロリーは使われずに脂肪になります。
朝食を抜けば、体が飢餓状態になるので脂肪をため込みやすい体質になります。
糖質の役割
糖質は脳のエネルギー源となったり、人の力になります。車で例えると、ガソリンのようなはたらきをします。
このガソリンが余れば、脂肪になります。昔の人は食糧が十分ではなかったので、余った糖質が生命を維持してくれました。
そして何より、私たちに幸福感を与えてくれます。
ご飯、麺、スイーツ、ミルク…全部おいしいです!
一昔前は『男は甘いものを食べない→酒が強い→俺カッコいい』みたいな暗黙の風習(?)のようなものがありましたが、
最近の男子って結構甘い物食べるんですよね。
実は甘い物を食べると、「ドーパミン」や「β-エンドルフィン」「セロトニン」などの神経伝達物質が出ます。
これらは、人に幸福感を与える作用があります。
甘いものを食べると気持ちが良くなるのはこのためです。
/シアワセデス!\
糖質制限をすると、体重が減った!
試しに私もやってみました。糖質制限食。
まず、ごはんや麺などの主食とお菓子を食べるのをやめました。
すると、みるみる体重が落ちること。
1日に100g~200gくらいずつ落ち、1週間で2kg近く落ちました。
即効性があります😨
ボクシングなど体重をコントロールしないと試合に出られないような人には、一時的な糖質制限はいいかもしれません。
すぐに体重が落ちたのは脂肪が減ったからではない?何が減った?
「糖質制限をすると体重が落ちるのは確かだけど、落ちているのは脂肪ではなく水分。」
という話を耳にすることがあるかもしれません。
<糖質制限で落ちるのは水分であるといわれる理由>
肝臓や筋肉には、糖分(グリコーゲン)が蓄えられていますが、そこには水分も一緒に蓄えられています。
血液中の糖分が減って、体が糖分不足を感じた時に、肝臓や筋肉の糖分が使われます。
肝臓や筋肉の糖分が使われれば、一緒に蓄えられた水分も一緒になくなるので、その分体重が落ちます。
蓄えられている糖分1gにつき、水分は3g程度一緒に蓄えられているので、糖分が100g使われれば、水分が300g減り、合計で400g体重が減ります。
肝臓に蓄えられる糖分は、人によって差はありますが100g前後、
筋肉に蓄えられる糖分は、だいたい300g前後なので、
肝臓と筋肉の糖分合わせて400gが使われ、更に一緒に蓄えられている水分が1200gなくなったとしたら、合計で1600g、つまり1.6kg体重が落ちる、ということになります。
これが、糖質制限をするとすぐに体重がおちる理由です。
ただし、肝臓も筋肉も合わせて400gくらいしか糖分を蓄えられないため、糖質制限をして体に蓄えられている糖分と水分が失われたとしても、せいぜい2kgくらいしか落ちません。
「糖質制限をして10kg体重が落ちた!」という体験談があるかもしれませんが、こういった人たちは、糖質制限をしながらいつの間にかカロリー制限をしていることが多いです。
ちなみに私も糖質制限をしてみましたが、ご飯の量が減るので、食欲がなくなり、一日に食べるカロリーが減りました。
よく考えてみてください。ついつい食べ過ぎてしまう時って、ご飯や麺が進む時ではありませんか?
お寿司がおいしい!
カレーがおいしい!
ラーメンがおいしい!
カツ丼がおいしい!
牛丼がおいしい!
スイーツがおいしい!
食べすぎた!!!
それは糖質のとりすぎだったりするのです。
ちなみに、「糖質制限をすると筋肉を分解してアミノ酸に変えて脳に送る。その時に水分を使用するので、体重が落ちる。」という話もありますが、この説には根拠がありません。
糖分が体からなくなったらどうなるのか
肝臓や筋肉に蓄えられている糖分がなくなると、自分の体で糖を作り出します。
具体的には、筋肉や脂肪などからエネルギーのもとがつくられます。
◆筋肉が分解される場合
体が飢餓状態になると、筋肉が分解されて糖が作られます。こういった体内の経路のことを「グルコース・アラニン回路」と言います。
筋肉が分解されると、もちろん筋肉が落ちます。
筋肉が落ちると基礎代謝が落ち、やせにくい体質になってしまいます。
「絶食ダイエットはキケン」と言われるのはこのためです。
◆脂肪が分解される場合
脂肪が分解されると、「ケトン体」が作られます。
今回の記事のキーワードの1つですね。
ケトン体とは、「β-ピドロキシ酪酸」、「アセト酢酸」、「アセトン」の総称のことを言います。
かつては、「脳のエネルギー源はブドウ糖のみ」と言われていましたが、今はケトン体も脳のエネルギー源になることが分かっています。
徹底した糖質制限食を行うことでケトン体をエネルギー源とする食事は「ケトン食」と呼ばれています。また、ケトン体を使う生活のことを「ケトジェニック」と呼ばれているようです。ケトン体を利用して病気を治す治療法を「ケトン食糧法」と呼ぶ先生もいます。
ちなみに「ケトン体食事法」とは、福田一典医師による独自の食事法で、糖質制限と決まった脂肪の摂取を組み合わせたもののことを言います。
◆その他
他にも自力でエネルギーを作り出す方法はあるのですが、長くなってしまうので、
をご覧ください。
なぜケトン食が良いと言われているのか-糖質制限食のメリット
いくつか糖質制限とケトン体に関する書籍を読んだので、部分的にピックアップします。
糖質制限をすると、肝臓でケトン体の合成が活発になります。脂肪酸にケトン体が加わり、「脂肪酸+ケトン体」というエネルギー系が確立されると、体脂肪がより効率的に消費される体質になるのです。人類最強の「糖質制限」論/江部康二/2016/SB新書より引用
食後高血糖と高インスリン血症は、なぜがんを引き起こすのか。そのメカニズムはまだ完全に解明されたわけではありませんが、次のように推察されます。
食後高血糖は、「酸化ストレス」を高めます。その酸化ストレスは遺伝子のミスコピーを誘発しやすく、そこから、"がんの芽"が生まれるのです。
(中略)
そして、がんの細胞の大好物は血糖(ブドウ糖)です。(中略)
糖質制限では通常より血中のブドウ糖が増えませんから、がん細胞の成長を抑えて、その増殖にストップをかけてくれるのです。人類最強の「糖質制限」論/江部康二/2016/SB新書より引用
※推察なので今のところ定かではないようです。
過剰な糖質摂取はアルツハイマー病による認知症のリスクを高めます。人類最強の「糖質制限」論/江部康二/2016/SB新書より引用
ケトン体には、抗炎症作用や細胞保護作用があります。
さらに、ケトン体が細胞のオートファジー(自食作用)を活性化して、細胞内に蓄積する老化したたんぱく質を分解して除去してくれます。
つまり、細胞を若返らせてくれるのです。やせる!若返る!ケトン体食事法/福田一典/2016/洋泉社より引用
つまり簡単にいえば、
①糖質制限をすると痩せるので、生活習慣病のリスクが下がる
②食後高血糖にならないので、がん細胞の増殖を抑制する
③食後高血糖にならないので、アルツハイマー病を防ぐ
④ケトン体は体を守ってくれる
⑤ケトン体はアンチエイジングの効果がある
という感じです。
なぜ「糖質制限派」と「糖質制限否定派」で意見が真っ二つに割れるのか
「糖質制限」を推奨している先生たちは、エビデンス(実験や統計の結果)をもとに自信をもって食事法を提唱しています。
そして「糖質をとることのデメリット」も取り上げ人々を納得させています。
また、「糖質制限」によって体重・体脂肪率が落ちたと言う人が世の中にたくさんいるので、この話を聞いて信じる人がたくさんいます。
また、カロリー制限をしたのに痩せられなかった人が"一般的なダイエット法"に反発しているのもあると思います。
一方で「糖質制限否定派」は、栄養学をしっかり勉強してきた忠実で真面目な人達なのだと思います。
私も大学生の頃、
「炭水化物は一日のエネルギーの半分以上とることがバランスのよい食事」
「炭水化物が不足すると体が動かなくなる、低血糖になる、脳が働かなくなる」
「ケトン体が出過ぎるとケトアシドーシスになるから危険」
と、さんざん勉強させられました。
なので「頑張って勉強したことが実は間違っていた」「教科書に書いてあることや先生たちが言っていることがウソだった」なんて思いたくないのです。
私もどちらかと言うと(出来は悪かったですけど)真面目な方でしたから、なんとなく「糖質制限」に反発したい気持ちが湧いてきます。
だって、栄養学科で勉強したんだもん。。
糖質制限食が危険と言われる理由
上にもチラっと書きましたが、理由はいくつかあります。
栄養バランスが乱れる
糖質制限を行うと必ずたんぱく質を多く摂る食生活になります。
たんぱく質を多くとるということは、腎臓のろ過機能を今までよりも働かせなければならなくなるので、腎臓に負担がかかると思われます。
この根拠としては、日本腎臓学会発作成の診療ガイドライン-「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」にて、
"CKD(慢性腎臓病)患者の人は、進行を抑制ためにたんぱく質をの摂取量を制限することが推奨される"
ということが書かれてるためです。
一般的に食べている食事のたんぱく質が腎臓病の進行に影響を及ぼすのであれば、
一般的な量の倍以上ノたんぱく質を摂取することになる糖質制限食が腎臓に負担をかける可能性はある、ということです。
ちなみに糖質制限の先駆者である江部先生は「たんぱく質は食べ過ぎても問題はない」とおっしゃっています。
しかし私はイチ管理栄養士として「たんぱく質を食べ過ぎても絶対に大丈夫」とは言い切ることができません。
また、糖質制限食を行うと脂質の摂取量が増えます。
脂質はカロリーが高いので、糖質制限を行うことによって今まで食べていた量よりもカロリーが高くなってしまい、結果的に太ってしまう、というケースもあるようです。
ちなみに厚生労働省もたんぱく質の食べすぎは良くないと言っている
「日本人の食事摂取基準2015年版 策定検討会報告書(厚生労働省)」という冊子にはこう書かれています。
たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の健康障害として、糖尿病発症リスクの増加、心血管疾患の増加、がんの発症率の増加、骨量の減少、BMIの増加などがあげられる。たんぱく質と糖尿病発症リスクの関係を認めた研究並びに、最近の系統的レビューでは、これらのどの事象についても明らかな関連を結論することはできないとしながら、たんぱく質エネルギー比率が20%エネルギーを超えた場合の安全性は確認できないと述べ、注意を喚起している。日本人の食事摂取基準2015年版 策定検討会報告書(厚生労働省)より引用
「たんぱく質エネルギー比率20%」というのは、簡単に言えば"普通の食事よりもたんぱく質の割合が多い食事"ということです。
科学的根拠をあげることはできないけど、絶対安全とは言い切れないと言っています。
ケトアシドーシス・ケトーシスが危険?
私は大学時代に「ケトン体が出過ぎるとケトアシドーシスになって危険。最悪、死を招く」と習ったので、ケトン体にはかなりのマイナスイメージがありました。
糖質制限を推奨していないお医者さんもそういった認識を持ってます。
しかし、「糖質制限食」を推奨する先生達によると、実は危険なのは主に1型糖尿病の人(先天的にインスリンの分泌がなくなる病気)だけのようです。
インスリンの分泌に問題がない普通の人は、ケトン体の血中濃度が極端に上がることもないし、仮にケトン体がたくさん作られても全く問題がないと声を揃えています。
糖質制限食をしていた有名人が何人も亡くなっている
「糖質制限をしたら〇〇kgもやせてスリムになりました!」というような内容の本を出版したり、世間に主張していた人たちが亡くなっています。
(若い順※wikipediaより)
・今井洋介さん(31)…心筋梗塞フジテレビの「テラスハウス」という番組に出演し、人気になりました。糖質制限によりダイエットに成功し、「100kgだったボクがポジティブになれたやせごはん」というレシピ本を出版しています。
・マッスル北村さん(39)…急性心不全
20kgの急な減量を行った結果、異常な低血糖状態となり、急性心不全を引き起こし死亡したそうです。飴の一個でも口にしなかったみたいなので、まったく糖質をとっていなかったのでしょう。体脂肪も底を尽きてケトン体すら出ない状態だったのでしょうかね?
・飯野賢治さん(41)…高血圧性心不全
「炭水化物抜きダイエット」を実践して減量に成功した後の死だったようです。
・前田健さん(44)…虚血性心不全
亡くなる3か月前に、twitterで「炭水化物抜きダイエット」をしていると明かしていたようです。
・桐山秀樹さん(62)…心不全
糖質制限により20kgのダイエットに成功し、「おやじダイエット部の奇跡」という本を出版しベストセラーになっています。
・宮本美智子さん(51)…急性多臓器不全
1995年に糖質制限を基本とする独自のダイエット法「世にも美しいダイエット」という本を出版しています。
・ロバート・アトキンスさん(72)…転倒死
アメリカ人で循環器学者の医師です。
1999年に「Dr.Atkins' New Diet Revolution」という本をアメリカで出版した後、日本でも翻訳されたものとして「アトキンス式低炭水化物ダイエット」という本を出版し、ブームになっています。
「アトキンス式低炭水化物ダイエット」によって50kg近く減量したものの、晩年にはリバウンドしてしまい元の体重に戻っていたようです。
死因は「転落死」なので、直接糖質制限が関わっていないように見えますが、実は心臓病を患っていたようです。
【ちなみに】
2013年に女優の天海祐希さんが心筋梗塞で倒れたことがニュースになりました。原因は明かしていないものの、「炭水化物ダイエットをしていた」ということがまことしやかに噂されています。
「危険」とまでは行かないが、糖質制限が懸念される原因
糖質制限をしても元気な人もいます。それでも懸念される理由は次の通り。
ケトン体の独特の体臭になる
ケトン体がたくさん出ると、独特な体臭・口臭になります。ツーンとした匂いです。
続かない
上記でも少し触れましたが、ロバート・アトキンスさんによる「アトキンス式低炭水化物ダイエット」はアメリカで物凄いブームになりました。なんと北アメリカに住む成人の7人に1人が「アトキンス式低炭水化物ダイエット」を行っていたらしいです。
当時は炭水化物が多く含まれている食事の売り上げが大幅に落ち込み、社会現象となったようです。
しかしその後のアトキンスさんの転落死や、このダイエット法の長期的な安全が保障できないという報告から次第にこのダイエット法を行っている人が次第に減っていってしまったそうです。
このアトキンスダイエットを行っている人が減った理由は、「効果がなかったから」か、「体に悪いかもしれないから」か、「食べたいものを食べたいから」からのどれかでしょう。
理由は人それぞれかもしれないですが、やっぱり人って炭水化物が大好きなんですよね。
過去に「DIME」という雑誌で、作家の羽田圭介さんの2ヶ月間で3kgやせたRIZAPでのボディメイク体験談が特集されていたのですが、感想としてこんなことが書かれていました。
始めてからわかったのですが、痩せるためには運動よりも、食事が重要だということ。糖質制限のつらさは予想がついていたのですが、シビアにやってみると大変でした。
(中略)
まず自分の意思であそこまでの糖質制限を続けるのは難しかったです。反動でカルボナーラを一気にパスタ3束分で食べたり、炭水化物を摂取しまくりました。そうしたら、2か月くらいで元の体重に。ライザップには糖質制限をゆっくり戻すというプログラムもあるけれど、そこに追加でお金を払うというのもなと私は思いましたDIME 2017 11月号-作家・羽田圭介さんが明かすRIZAP〝壮絶〟体験記-より引用
2ヶ月かけて頑張ってダイエットをしたのに、反動による食べすぎのせいでまた元の体重に戻るなんて意味ないですね…😭
やっぱり人っていう動物は、我慢したら、後で反動がやってくるものなのです。
糖質を抜くのが苦ではない人なら簡単に成功できるかもしれないですが、子どものころから炭水化物を中心にした食生活をしてきた多くの人には、糖質制限はかなり過酷な食事制限なのかもしれません。
なぜ糖質を制限すると心臓疾患になりやすいと言われるのか
京都大学名誉教授の森谷 敏夫氏はこう話します。
心電図と自律神経の解析では、高脂肪食を食べたときに、交感神経活動が非常に高くなりました。心臓にとっても、非常に不整脈が出やすい状態をつくりだすことが分かっています。通常の女子学生でそうですから、心臓が弱ってきてる、動脈硬化が進んでる方が高脂肪食をとって炭水化物を減らしてしまうと、心臓に対しての負担も非常に大きくなる可能性があります。おせっかい倶楽部-特集-ほんとうのところ「糖質制限」ってどうなんですか?より引用
やはり「可能性」なので、糖質制限を推奨する人には「エビデンスがない」と論破されてしまいそうですが、ただエビデンスがないだけで、絶対に森谷先生がでたらめを言っているということにはなりません。まだ証明はされていなくても可能性があるかぎり、リスクはあるのです。
しっかり糖質をたべていても、痩せるもんは痩せる
あの「ホリエモン」さんが刑務所から出てきたときはスリムになっていましたよね。
刑務所の食事は、普通にご飯が出てきます。
同じように、しばらく入院して病院食を食べていた人もスリムになります。
もちろん病院食も、一般的な栄養学科で栄養学を学んだ栄養士が立てる献立であれば、ご飯は出ます。
普通は炭水化物の量が全体エネルギー量の50%以上になる献立を作ります。
すなわち糖質制限食ではありません。
それなのに痩せます。
それは決まった時間に「カロリー制限食」を食べているからなのです。
だから、逆に言えば、
①寝る前など変な時間に食事をする
②病院食とは程遠い食事をする
ことが一番の問題なのです。
「そんな決まった時間に、たいしておいしくないものなんか食べたくないよ!」
って思いましたか?
それが痩せられない原因なんです。
そして、糖質制限食にたどり着きます。
糖質悪者説を信じることが悪いとは言っていません。
確かに精製糖は私も良くないと思います。
ただ、長期間にわたって糖質を全くとらないという食生活は、やりすぎだと思うのです。
糖質制限の先生たちは、「糖質を全くとらなくても大丈夫だ」とおっしゃっていますが、
私の口からはそのようなことは、責任を持って言うことはできません。
WHOが提唱している糖の制限とは、「糖質」のことではない
世界保健機関(WHO)は「1日当たりの遊離糖類摂取量を25グラム程度にすると抑えるなら、更に健康効果は増大する」としています。
ここで勘違いされやすいのですが、遊離糖類とは、ごはんやパン、麺などのことではありません。
遊離糖類とは単糖類(ブドウ糖・果糖等)及び二糖類(しょ糖・食卓砂糖等)のことで、人が食品・飲料に添加する糖類のほか、蜂蜜・シロップ・果汁・濃縮果汁中に天然に存在しているものをいう。
遊離糖類摂取量をエネルギー総摂取量の10%未満に抑えるなら、過体重・肥満・う歯(虫歯)のリスクを減らせる明確な証拠がある。
なおこのガイドラインは、生鮮果実・野菜中の糖及び乳中に天然に存在する糖を対象に含めていない。これらについては、摂取による有害影響を裏付ける証拠がないためである。食品安全総合情報システム-世界保健機関(WHO)、ガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を発表より引用
遊離糖類摂取量をエネルギー総摂取量の10%未満に抑えるなら、過体重・肥満・う歯(虫歯)のリスクを減らせる明確な証拠がある。
なおこのガイドラインは、生鮮果実・野菜中の糖及び乳中に天然に存在する糖を対象に含めていない。これらについては、摂取による有害影響を裏付ける証拠がないためである。食品安全総合情報システム-世界保健機関(WHO)、ガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を発表より引用
たしかに「遊離糖類」は、分子が小さいので摂取すると急激に血糖値をあげるため、体に悪影響を及ぼします。
いわゆる「糖質制限食信者」ではない私でも、なるべく食べないようにした方がいいものだと思っています。
ここで注意していただきたいのは「WHOが糖類が危険と言ったから」といって、糖類全部を一緒くたにして主食や果物まで抜く、ということはWHOの意図からズレることになるということです。
砂糖は遊離糖類だから、食べ過ぎると危険!
ご飯は遊離糖類じゃないよ。
筆者の個人的な考え
「糖質制限-ケトン体」を勧める先生たちの本を読んでいると、確かに科学的であり、エビデンスもしっかり書かれているので、「本当に糖質をまったくとらなくてもいいのかもしれない!」という感覚になります。
ただ、栄養学というものは、まだまだ分かっていないことも多いのが現状。
もしかしたらあと10年もたてば、「糖質制限をしたら本当に危ない」という報告が上がっているかもしれません。
糖質制限を唱える先生たちは声をそろえてこう言います。
「原人は肉を主に食べており、糖質はほとんど手に入らなかった。イヌイットの人たちも肉食。だから糖質をとらなくても人は生きていける――」
たしかに糖質は人の体内でつくられますし、糖質が枯渇したらケトン体が作られるので、人は生きていけるでしょう。
しかし原人やイヌイットの人たちの寿命は決して長くはありません。
医療の発展が進んでいない時代・環境という理由もあるかもしれませんが、今の日本の高齢者の方々が生まれた時も、今ほど医療は発達していませんでした。
現代のおじいちゃんおばあちゃんたちは、戦中・戦後を生き抜いてきた人たちです。
彼らが若かった時代は、今のように食べ物が豊富にあったわけではなく、玄米やイモを主食にしていました。
精白米が簡単に食べられるようになってからも、あまり肉類は手に入らないので、畑でとれた野菜などを長期的に保存できるように加工し、おかずは少しで、米を中心にして食べていました。
"大盛りのご飯に梅干し一つ"という食事も珍しくなかったようです。
でも日本は世界ランク上位をキープする長寿大国です。
私たち日本人のおじいちゃん・おばあちゃんたちは、お米を主食として食べても大丈夫であることを証明してくれています。
●人の体は環境や食生活によって変わっていく
体の機能は使われないとどんどん退化していくものです。
仮に完全な糖質制限を数年行ったとしたら、インスリンが出ない状態が続くので、そのうちインスリンの出が悪くなりそうな気がします。(私の根拠のない持論です)
でも脳だって使わなければどんどんボケてきちゃいますよね。
例えば厳しい糖質制限を長期間続けていたある日、何かがきっかけで糖質を食べなきゃならない状況(災害時等)になるなど、想定外に糖質を食べる機会が訪れるとしましょう。
そんな時、果たしてインスリンがしっかり出てきて働いてくれるのか…?!
そんな時、果たしてインスリンがしっかり出てきて働いてくれるのか…?!
絶対に大丈夫!!!とは言い切れません。
糖質制限をして体重が落ちた人が目立っていますが、実際のところは糖質制限をしても体重が落ちなかった人、糖質制限自体出来なかった人もたくさんいます。
また、実際にカロリー制限をして痩せられた人もたくさんいます。
多くのヒトは、高濃度のビタミンAを代謝することができませんが、生肉などからビタミンAをたくさんとる習慣のあるイヌイットの人たちだけは、高濃度のビタミンAを代謝する能力を持っているそうです。
もしかしたら私たち日本人もそういった個性的な能力があるかもしれません。
※2018.9.26追記
早稲田大学の服部正平教授らが日本人106人の腸内細菌叢を解析したところ、日本人の腸には炭水化物を分解する細菌が他の国よりも多いことがわかったそうです。
(早稲田大学-健康な日本人の腸内細菌叢の特徴解明、約500万の遺伝子を発見 平均寿命の高さや低肥満率等との関連も示唆より)
なので、私たちの祖先がこれまでずっと続けてきた食生活のパターンをガラッと変えてしまったら、もしかしたら何か不具合が起こってしまうかもしれません。
こんなことを書けば、「また根拠のない話を」と言われてしまうかもしれませんね…
こんな感じで、糖質制限否定派の先生たちの主張も、江部先生に論破され、「根拠がない」とスッパリ切り捨てられています。
でも、繰り返しになってしまいますが、栄養学はまだまだ未知なことばかりで、国民みんなで人体実験をしている状態です。
マーガリンのトランス脂肪酸だって、今となっては「体に悪い」と言われていますが、昔は「植物性の油だから体にいい、コレステロールを下げる」と言われている時代もあったのですよ。
今の高齢者の方たちとは違って、私が子どもの頃は、大好きなジャンクフードをたくさん食べて育ってきたので、もしかしたら80歳まで生きられないかもしれません。
私のように、ジャンクフードを食べて育った人や、
健康・ダイエットために糖質制限を徹底して過ごしている人、
「豊胸サプリ」など、よくわからない栄養素が入っているサプリを飲み続けた人…
その人たちが20年、30年後、どうなっているのか、先のことは未来に行ってみないとわかりません。
●今後筆者はどうするのか
ということで私は、「全く完全ではないけれども、軽めの糖質制限」を行いながら、生活していきたいと思っています。(←なんだかんだ言って結局糖質制限をする)内容は、
①朝・昼は普通にご飯を食べて、夕食は主食を抜く。
②お菓子は基本食べない。食べても1週に1度。
③果物はビタミンや抗酸化物質でアンチエイジング・美肌効果がるので毎日朝か昼に食べる。
という感じです。
元々自分自身がご飯・麺・パン・お菓子大好き人間なので、制限でもしていないとついつい食べ過ぎてしまうんですよね。
たとえばラーメンに餃子、白ご飯なんて最高です。
でもやっぱり1日に食べるべき糖質の量にも限度というものがあるので、食べ過ぎたらもちろん栄養が偏ります。
なので、糖質の食べ過ぎ防止のためにプチ糖質制限を行っていきたいと思っています。("極端な糖質制限信者"にならないことは敢えて強調しておきます)
晩御飯は主食を抜く、という決まりを作りましたが、人と食事に行くときは食べます。
そして1日のエネルギー摂取量の50~60%を糖質からとる、ということは変えずに生きていきたいと思っています。
【6か月後】
この記事を書いてから6か月経ちました。
なんと、2か月目あたりから晩御飯に糖質を摂らない生活に耐えられなくなり、食べるようになりました。米、おいしすぎる。。
ええ。お菓子も食べましたよ。甘いもの。大好きです。ちょっとね…食べないのは無理です。特に生理前後の甘いもの欲求は尋常じゃないんですよ。
でも体重は5kg減りました。
明らかに前の生活と変わったことは、「満腹状態で寝ない」ということです。
やっぱり人間、好きなものを我慢するとツライし、反動が来ます。
なので個人的には、「糖質制限」よりも「時間栄養学」の理論の方が心にも体にも良い効果があると思います。
詳しくは↓