これで納得!解糖系/クエン酸回路/電子伝達系で生まれるATPの数!

教科書には「1分子のグルコースから最大で38ATP(もしくは32ATP、30ATP)が産生される」と書いてあるけど…どこで?なぜ?どうやって…?!

ここでは、そんなモヤモヤを超わかりやすく解消することができるので見ていってください♪


🔶1つのグルコースから生まれるATP







38ATP説


高校理科や医療系国家試験のテキストには「38ATP」と記載されているものが多いので、まずは基本事項として38になる理由を説明しますね。


解糖系

ATPの数まとめ解糖系

解糖系は、一つのグルコースから始まります。

解糖系は「準備期」と「報酬期」に大きく分けられます。準備期では、これから色々と変化するための準備をしなくてはならないので、パワーを使います。そのためATPを消費します。

報酬期に入る時、分子が二つに分裂します。そのため、図のピンク色の部分から物質が2つずつになります。物質が2つずつになるので、生まれてくるNADHやATPも二倍になります。

ただ、最初にATPを2つ消費しているので、解糖系で生産されるATPは2つであるとされています。

→詳しくは【解糖系】


クエン酸回路(TCAサイクル)

ATPの数まとめクエン酸回路

クエン酸回路では、一つのピルビン酸からNADHが4つ、FADH2が1つ、GTPが1つ生まれます。ATPは直接生まれてきませんが、GTPはATPになります。

一つのグルコースからピルビン酸は2つ生まれるので、一つのグルコースから生まれるNADHは倍になって8つ、FADH2も倍になって2つ、GTP→ATPも倍になって2つ生まれてくることになります。

→詳しくは【クエン酸回路】

電子伝達系

電子伝達系

電子伝達系ではNADHとFADH2をATPに変えます。

1つのNADHからは3つのATPが、

1つのFADH2からは2つのATPが生まれます。

詳しくは→電子伝達系


まとめ

ATPの数まとめ全体図

まとめると、

解糖系で生まれるのは

・ATPが2つ
・NADHが2つ

クエン酸回路で生まれるのは

・GTPがATPになったものが1つ×2=2つ
・NADHが4つ×2=8つ
・FADH2が1つ×2=2つ

であり、ここまでの合計が

・ATPが4
・NADHが10
・FADH2が2

ですね。

そして電子伝達系でATPに変えられると、

・4ATP×1=4ATP
・10NADH×3=30ATP
・2FADH2×2=4ATP

となるので、このトータルが38ATPとなるわけなのです!



"最大"ってどういうこと?


「1分子のグルコースから最大で38ATPが産生される」

この"最大"の意味がわからない人って結構いるので説明しますね。

例えば解糖系では、いくつかのステップをたどってからピルビン酸になりますよね。

しかし、解糖系に入ったすべてのグルコースがピルビン酸になれるとは限りません。

たとえば、グルコースがグリコーゲン(体の中に蓄える形の糖)を作る時、一瞬解糖系が始まるのですが、すぐに別のルートへ行ってしまうんです。

グリコーゲンの合成と分解
→グリコーゲンを詳しく見る

そんな時はATPを一つも作らずに解糖系が終わります。

これが"最小"です。

このようにして解糖系、クエン酸回路にはいくつもの脇道があり、グルコースから変化した物質達はいろんな道にそれていきます。

一方でどのルートにも目をくらませずに一直線でクエン酸回路→電子伝達系へ入っていく強者グルコースがが最終的に38ATPをいう数字を叩き出すわけです。



32ATP説


実を言うと、厳密にはNADHからは2.5ATPFADH2からは1.5ATPが作られています。(ソース:南江堂/シンプル生化学/改定第6版)

「38ATP説」よりもNADH、FADH2がそれぞれ0.5ATPずつ少ない数ですよね。

解糖系からクエン酸回路までに生成されるNADHとFADH2を合計すると12個ですから、12個分のATPが0.5個ずつ足りない、ということになりますので12×0.5で6ATP。

つまり、38から6を引いて32ATPになるというわけです。

どちらかというと、32ATPの方が正確です😉


30ATP説


上記と同じ考え方で、「1分子のグルコースから32分子のATPができる」とします。

しかし、実は解糖系でできたNADHは、ミトコンドリアを通過する時に2ATPを使います

この2ATPを差し引くと、30ATPになるというわけです。


そう考えると、38ATP説から2を引いた「36ATP説」もあり得ますよね。









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