油を食べるとどうやって消化吸収されるの?物質をキャラ化して解説!【初心者向け】
今回は、「中性脂肪」を中心として、脂肪が消化・吸収される仕組みをご紹介します!
脂質とは、「水には溶けないもののエーテルやクロロホルムなどの有機溶媒に溶ける有機化合物のこと」を言います。
ちょっとわかりにくいですよね。
とりあえず、身近にあるサラダ油を想像してください。あれは水には溶けませんが、エーテルなどの化学物質には溶けます。
私達は毎日食べる食事で、必ずと言っていいほど「脂質」を摂取します。
脂質は「太る」、「動脈硬化の原因になる」などと悪く言われがちですが、人にとっては重要な栄養源です。
脂質は消化された後、新しい細胞やホルモンの材料になったり、人が活動するエネルギー源になったりします。
もちろん摂りすぎれば体脂肪になって太ってしまいますが、適度に脂質を摂ることは、とても重要なことなのです。
脂質は色々な種類があるのですが、その中でも私たちが一番身近に感じることができるのは、「中性脂肪」です。
私たちが食べている脂質のほとんどは中性脂肪
(日本食品成分表より)
このように、私たちが食べ物として摂取する脂質のほとんどは中性脂肪です。
ちなみに、太った時に体につくブヨブヨのぜい肉も中性脂肪です。
なので、このページでは「中性脂肪の消化」を中心に説明していきますね。
中性脂肪とは、「グリセリド」という物質と、「脂肪酸」という物質が結合したものことを言います。
・「グリセリド」に「脂肪酸」が1つだけ統合したものを「モノグリセリド」(モノはギリシャ語で1つのいう意味)
・「グリセリド」に「脂肪酸」が2つ結合したものを「ジグリセリド」(ジはギリシャ語で2つのいう意味)
・「グリセリド」に「脂肪酸」が3つ結合したものを「トリグリセリド」(トリはギリシャ語で3つのという意味)
といい、これらををまとめて中性脂肪と呼んでいます。
ただ、世の中に存在する中性脂肪のほとんどが「トリグリセリド」のため、中性脂肪=トリグリセリドとして説明する人がほとんどです。
「グリセリド」は「グリセロール」「グリセライド」とも呼ばれることがあります。
なので、「トリグリセリド」のことを「トリグリセロール」「トリグリセライド」また、「トリアシルグリセロール」と呼ぶこともあります。
専門家はこれを略して「TG」と書きます。
ここからが本題です😃
食事として取り入れた脂質は、どんなルートをたどってどうなるのでしょうか?
早速見ていきましょう!
私たちは普通に生きていれば、必ず食べます。
揚げものなどの脂っこい物を食べなくても、なにかしらの油脂はどこかに含まれています。
例えば、何も味の付いていない食パンにも油脂は意外と含まれています。
(日本食品成分表より)
でも、ここからの説明では、わかりやすくするために、中性脂肪100%の油だけを食べたことにしますね。
油は食道を通って下に下に降りていきます。
胃にたどり着きます。
この時、胃が「蠕動運動(ぜんどううんどう:うねる運動)」や「攪拌運動(かくはんうんどう:かき混ぜる運動)」します。この運動により、油は細かくなりながら、胃液と混ざり合わさります。
胃液の中には、リパーゼという消化酵素が存在します。
リパーゼは脂肪を分解します。
基本的に中性脂肪には、脂肪酸が3つ含まれていています。
リパーゼは、その脂肪酸を気まぐれで1つだけ切り離したり、切り離さなかったりして、中途半端に分解しています。
実は口から分泌される唾液にも、リパーゼは存在しますが、あまり出てこないので、唾液では脂肪はほとんど分解できていません。
小腸は、十二指腸・空腸・回腸の三つに分けられます。
4-1.十二指腸
十二指腸では多くの中性脂肪がリパーゼによって細かく分解されます。
リパーゼの働きによって、中性脂肪の7割はモノグリセリドまで分解されます。
モノグリセリドまで分解されれば、小腸で吸収されるようになります。
残りの3割がグリセリドまで細かく分解されます。
なぜ十二指腸で多く分解されるのかというと、十二指腸にはファーター乳頭と呼ばれる消化液の出口があるからです。
ファーター乳頭からは、膵臓(すいぞう)で作られたリパーゼなどの消化酵素や、胆汁(たんじゅう)が大量に出てきます。
胆汁は肝臓で作られ、その後胆嚢(たんのう)という器官に蓄えられて凝縮され、そこから出てくるため、「胆汁」という名前がついています。
胆汁には、主に胆汁酸というリパーゼの働きの助けをする成分や、胆汁色素という色素成分が含まれています。
消化液が大量に出るファーター乳頭は別名「大十二指腸乳頭」とも呼ばれています。
「大」があるということは「小」もあります。
「大十二指腸乳頭」の近くに「小十二指腸乳頭」がありますが、そこからはあまり消化液は出ていません。
4-2.空腸
細かく分解された脂肪のほとんどは空腸で吸収されます。
ちなみに他の栄養素の大半も空腸で吸収されると考えられています。
小腸の表面の細胞は、毛が生えているような形で波打ったような形をしています。
これを絨毛(柔毛:じゅうもう)と言います。
こうすることで表面積を広くし、たくさんの栄養を取り込めるようにしています。
分解されて細かくなったモノグリセリドや脂肪酸は、そのままでは微絨毛膜の中に取り込まれので、取り込まれやすいように膜を張ります。
この膜は胆汁酸やリン脂質でできています。
こうやって取り込まれやすい粒のような形なった状態をミセルといいます。
~回腸について~
脂肪はほとんど空腸で吸収されるので、回腸ではあまり脂肪は吸収されないと考えられています。
ちなみにミセルは空腸で取り込まれる時に裂けるのですが、その避けて穴の開いたミセルは回腸で回収されます。
その後ミセルは小腸で再利用されたり、排泄されたりします。
5.小腸の細胞の中でトリグリセリドが形成される
胃や十二指腸で分解された中性脂肪は、
小腸の細胞の中に取り込まれると、小胞体(しょうほうたい)という場所でまた元の形に戻ります。
わざわざ胃や十二指腸で細かく分解されたのは、
小腸の細胞に吸収されるためでした。
一度吸収されてしまえば、細かい状態である意味はなくなるので、また元に戻るというわけです。
トリグリセリドという大きな物質に戻った中性脂肪は、小腸の細胞の中にあるゴルジ体(ごるじたい)の中でカイロミクロンという物質に取り込まれます。
カイロミクロンとは、「リポタンパク質」というものの一種で、簡単にいうと中性脂肪やコレステロールなどを運ぶバスのようなものです。
詳しくは→中性脂肪やコレステロールを運ぶバスの種類
ちなみにゴルジ体では、カイロミクロン以外のリポタンパク質をつくることもあります。(たとえばVLDLなど)
カイロミクロンは、リンパ管の中に入り込みます。
なお、糖やアミノ酸の場合はリンパ管ではなく、毛細血管に取り込まれます。
毛細血管が栄養を取り込むための穴は、直径60~80ナノメートルくらいしかないので、大きなカイロミクロンは中に入ることが出来ず、リンパ管から取り込まれるのです。
小腸からつながるリンパ管は、上へ向かって進みます。
そしてそのリンパ管は、左の鎖骨の下の静脈(左鎖骨下静脈)に繋がっているので、中性脂肪を乗せたカイロミクロンバスはそこから血管内に入り込みます。
左鎖骨下静脈に流れる血液は、心臓に向かって進みます。
心臓に入ると、血液の流れは右心房(心臓の一部)→右心室(心臓の一部)→肺動脈→肺→左心房(心臓の一部)→左心室(心臓の一部)→大動脈→全身
という流れで進みます。
皮膚を切ったら血が出るように、
血管は体中に張り巡らされているので、あらゆるところを走ります。
冒頭でも述べましたが、全身に配られた中性脂肪は、基本的には新しく生まれる細胞やホルモンの材料になったり、人が活動するためのエネルギーになったりします。
中性脂肪がたくさんありすぎると、ぜい肉として体に蓄えられます。
基本的には、食べた脂肪がすぐにエネルギーとして使われるわけではなく、一度蓄えられてから、ぶどう糖がなくなった時に使われます。
体が動くためのエネルギーのことをATPと呼びます。(詳しくは→ATPとは?)
ATPは基本的にブドウ糖から作られているのですが、
体内のブドウ糖が足りなくなってくると、ホルモンが働き、中性脂肪が分解されてグリセロールと脂肪酸になります。
分解されてできたグリセロールと脂肪酸は、いろいろな経路をたどってATPを作り出します。
詳しくはぜい肉からATPを作る方法
ちなみにこの時、ホルモンの影響を受けて脂肪を分解するリパーゼのことを「ホルモン感受性リパーゼ」と言います。
健康診断で血液の検査をしたことはありますか?
血液検査の結果の【脂質代謝】や【脂質系の検査】という項目の
「中性脂肪」という項目があれば、あなたの血液中の中性脂肪の量ことを指しています。
「トリグリセリド」や「TG」という名前で書かれていることもあります。
たとえば健康診断の結果が100mg/dlだったとすると、
あなたの1デシリットル(100ml)の血液の中には、100mg(0.1g)の中性脂肪がありますよ、という意味になります。
基準値は30~135mg/dlです。
これ以上の数値になると、高すぎです。
中性脂肪が高い状態が続くと動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす可能性が高くなります。
中性脂肪は、脂っこいものの食べすぎや、お酒の飲みすぎ、甘い物の食べすぎで値が上昇するので、暴飲暴食を控えるようにすれば下がります。
また食物繊維は、脂肪が小腸から吸収されるのを邪魔してくれる役割があるので、野菜をたくさん食べれば中性脂肪の上昇を抑えることができます。
中性脂肪以外の代表的な脂質は、「コレステロール」と「リン脂質」です。
コレステロールは主に動物性の脂肪に含まれています。
基本的にコレステロールは脂肪酸と結合しています(結合した状態をコレステロールエステルと言います)。
脂肪酸と結合したままでは小腸へ取り込まれなので、コレステロールエステラーゼという酵素と胆汁によって分解されてから吸収されます。
小腸で吸収された後は、コレステロールのままで存在したり、再び脂肪酸とくっついてコレステロールエステルになってカイロミクロンバスに乗り込み、中性脂肪と同じルートで全身に運ばれます。
ちなみに血液中の4分の3のコレステロールは、脂肪酸と結合した状態で存在します。
リン脂質は主に卵や大豆製品などに多く含まれる油です。
「レシチン」という栄養素を聞いたことがありますか?
レシチンは、リン脂質の一種です。
卵に含まれる脂質のうちの約75~80%が中性脂肪、20%~30%がリン脂質、4%前後がコレステロールです。
(卵によって割合は異なりますが、だいたいこのような感じの割合です。)
リン脂質もそのままでは小腸に吸収されないので、ホスホリパーゼという酵素と胆汁によって分解されてから吸収されます。
分解されたリン脂質は、リゾリン脂質と脂肪酸に分けられます。
そして小腸で吸収されたあとは、またリン脂質に戻ります。
リン脂質は、ミセルの膜をつくるなど、主に油が体になじみやすくするように物質を加工する役割があります。
普通の中性脂肪は分解後、また中性脂肪に戻ってリンパ管に吸収される、と説明しましたが、実は分解後に中性脂肪に戻らずに小さな毛細血管に入り込む脂肪酸が存在します。
それが中鎖脂肪酸です。
中鎖脂肪酸とは、炭素を8~10個持っている脂肪酸のことをいいます。一般的な脂肪酸は炭素を11個以上持っているので、普通の脂肪酸よりも小さい脂肪酸ということになります。
中鎖脂肪酸は分子が小さく水に溶けやすい性質のため、糖などと一緒に毛細血管の小さな窓から門脈へ入り、直接肝臓へたどり着くため、他の脂質よりも早く吸収されます。
体が小さいので、リンパ管から心臓をたどるコースををショートカットできる、というわけです。
そのため、一般的な中性脂肪に比べて4~5倍の速さで吸収され、すぐさまエネルギーになり、しかも体脂肪として蓄積しにくい性質、というちゃっかり者な脂肪酸なのです。
食品からとれる中鎖脂肪酸は主に、
・オクタン酸/別名:カプリル酸(炭素数8個)
・デカン酸/別名:カプリン酸(炭素数10個)
の二つです。
ただし、食品中にある脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸(普通の脂肪酸)です。
中鎖脂肪酸が比較的多く含まれる食品は、ココナッツ油、バター、牛乳、チーズです。
ただし、「比較的」多く含まれるだけで、決して上記の食材に含まれる脂肪のすべてが中鎖脂肪酸というわけではありません。
もちろん上記の食材には長鎖脂肪酸からできる中性脂肪も大量に含まれているので、食べすぎれば太ります。
「中鎖脂肪酸が入っている」という説明が書いてあるサラダ油なども、たっぷりと長鎖脂肪酸が含まれているので、その油を食べても太らないというわけではありません。
油とは、サラダ油とかオリーブ油とかのサラサラした液体状のアブラをいい、
脂とは、お肉の白い部分のようなラードや、バターなどの動物性で固形状のアブラのことを言います。
この二つをまとめて油脂や脂肪と言います。
つまり、油脂と脂肪は同じ意味です。
脂質とは、生体成分(生きているものから作られる物質)のうち、水に溶けないものの総称のことです。つまり、生体成分であれば、油も脂も油脂も脂肪も脂質です。植物も生きているので、植物からとれる油も脂質になります。
🔶油の消化
もくじ
・脂質とは?
・私たちが食べている脂質のほとんどは中性脂肪
・脂肪を食べるとどうなる?
1.食べる
2.食道
3.胃
4.小腸
5.トリグリセリドが再形成される
6.カイロミクロンに取り込まれる
7.小腸から抜け出し、リンパ管へ
8.左鎖骨下静脈へ
9.心臓→肺へ
10.全身へ
・配られた中性脂肪はどうなるの?
・脂肪がエネルギーになる?
・自分の中性脂肪の量はわかる?
血液検査値が高かったら?
値はどうやって下げられる?
・中性脂肪以外の脂質
コレステロール
リン脂質
・普通ではない吸収のされ方をする中性脂肪もある
・油と脂と脂質と脂肪の違い
・まとめ
・脂質とは?
・私たちが食べている脂質のほとんどは中性脂肪
・脂肪を食べるとどうなる?
1.食べる
2.食道
3.胃
4.小腸
5.トリグリセリドが再形成される
6.カイロミクロンに取り込まれる
7.小腸から抜け出し、リンパ管へ
8.左鎖骨下静脈へ
9.心臓→肺へ
10.全身へ
・配られた中性脂肪はどうなるの?
・脂肪がエネルギーになる?
・自分の中性脂肪の量はわかる?
血液検査値が高かったら?
値はどうやって下げられる?
・中性脂肪以外の脂質
コレステロール
リン脂質
・普通ではない吸収のされ方をする中性脂肪もある
・油と脂と脂質と脂肪の違い
・まとめ
脂質とは?
脂質とは、「水には溶けないもののエーテルやクロロホルムなどの有機溶媒に溶ける有機化合物のこと」を言います。
ちょっとわかりにくいですよね。
とりあえず、身近にあるサラダ油を想像してください。あれは水には溶けませんが、エーテルなどの化学物質には溶けます。
私達は毎日食べる食事で、必ずと言っていいほど「脂質」を摂取します。
脂質は「太る」、「動脈硬化の原因になる」などと悪く言われがちですが、人にとっては重要な栄養源です。
脂質は消化された後、新しい細胞やホルモンの材料になったり、人が活動するエネルギー源になったりします。
もちろん摂りすぎれば体脂肪になって太ってしまいますが、適度に脂質を摂ることは、とても重要なことなのです。
脂質は色々な種類があるのですが、その中でも私たちが一番身近に感じることができるのは、「中性脂肪」です。
私たちが食べている脂質のほとんどは中性脂肪
ラードの97%が中性脂肪!
牛脂の94%が中性脂肪!
サラダ油の97%が中性脂肪!ちなみにオリーブ油は99%が中性脂肪!
(日本食品成分表より)
このように、私たちが食べ物として摂取する脂質のほとんどは中性脂肪です。
ちなみに、太った時に体につくブヨブヨのぜい肉も中性脂肪です。
皮膚の下には中性脂肪がたっぷり!
なので、このページでは「中性脂肪の消化」を中心に説明していきますね。
中性脂肪とは?
中性脂肪とは、「グリセリド」という物質と、「脂肪酸」という物質が結合したものことを言います。
・「グリセリド」に「脂肪酸」が1つだけ統合したものを「モノグリセリド」(モノはギリシャ語で1つのいう意味)
・「グリセリド」に「脂肪酸」が2つ結合したものを「ジグリセリド」(ジはギリシャ語で2つのいう意味)
・「グリセリド」に「脂肪酸」が3つ結合したものを「トリグリセリド」(トリはギリシャ語で3つのという意味)
といい、これらををまとめて中性脂肪と呼んでいます。
ただ、世の中に存在する中性脂肪のほとんどが「トリグリセリド」のため、中性脂肪=トリグリセリドとして説明する人がほとんどです。
グリセリドの呼ばれ方
「グリセリド」は「グリセロール」「グリセライド」とも呼ばれることがあります。
なので、「トリグリセリド」のことを「トリグリセロール」「トリグリセライド」また、「トリアシルグリセロール」と呼ぶこともあります。
専門家はこれを略して「TG」と書きます。
脂肪を食べるとどうなるの?
ここからが本題です😃
食事として取り入れた脂質は、どんなルートをたどってどうなるのでしょうか?
早速見ていきましょう!
1.食べる
私たちは普通に生きていれば、必ず食べます。
揚げものなどの脂っこい物を食べなくても、なにかしらの油脂はどこかに含まれています。
例えば、何も味の付いていない食パンにも油脂は意外と含まれています。
食パン1枚(60g)には中性脂肪が4g入っています
クロワッサンだと、食パンと同じ重さ(60g)でもなんと中性脂肪が25gも!
(日本食品成分表より)
でも、ここからの説明では、わかりやすくするために、中性脂肪100%の油だけを食べたことにしますね。
ボク、中性脂肪です!これから消化されていっきまーす!
2.食道
油は食道を通って下に下に降りていきます。
3.胃
胃にたどり着きます。
この時、胃が「蠕動運動(ぜんどううんどう:うねる運動)」や「攪拌運動(かくはんうんどう:かき混ぜる運動)」します。この運動により、油は細かくなりながら、胃液と混ざり合わさります。
胃液の中には、リパーゼという消化酵素が存在します。
リパーゼは脂肪を分解します。
基本的に中性脂肪には、脂肪酸が3つ含まれていています。
リパーゼは、その脂肪酸を気まぐれで1つだけ切り離したり、切り離さなかったりして、中途半端に分解しています。
実は口から分泌される唾液にも、リパーゼは存在しますが、あまり出てこないので、唾液では脂肪はほとんど分解できていません。
き・ま・ぐ・れ❤
4.小腸
小腸は、十二指腸・空腸・回腸の三つに分けられます。
4-1.十二指腸
十二指腸では本気を出すわよ!!!!
オラオラオラオァ~~!
オラオラオラオァ~~!
十二指腸では多くの中性脂肪がリパーゼによって細かく分解されます。
僕、ジグリセリドです。脂肪酸が1つ外されました。
僕、脂肪酸です!トリグリセリドのお尻から抜け出してきました!
僕、モノグリセリドです!脂肪酸が2つ外されました。この大きさでも吸収されます。
リパーゼの働きによって、中性脂肪の7割はモノグリセリドまで分解されます。
モノグリセリドまで分解されれば、小腸で吸収されるようになります。
残りの3割がグリセリドまで細かく分解されます。
どうも。グリセリドです♪脂肪酸が1つもついていないからもう中性脂肪ではないよ。
なぜ十二指腸で多く分解されるのかというと、十二指腸にはファーター乳頭と呼ばれる消化液の出口があるからです。
ファーター乳頭からは、膵臓(すいぞう)で作られたリパーゼなどの消化酵素や、胆汁(たんじゅう)が大量に出てきます。
胆汁は肝臓で作られ、その後胆嚢(たんのう)という器官に蓄えられて凝縮され、そこから出てくるため、「胆汁」という名前がついています。
胆汁には、主に胆汁酸というリパーゼの働きの助けをする成分や、胆汁色素という色素成分が含まれています。
胆汁には消化酵素は入っていないわよ
消化液が大量に出るファーター乳頭は別名「大十二指腸乳頭」とも呼ばれています。
「大」があるということは「小」もあります。
「大十二指腸乳頭」の近くに「小十二指腸乳頭」がありますが、そこからはあまり消化液は出ていません。
ちなみにこの胆汁色素は黄色っぽい茶色をしています。
ウンチの茶色はこの胆汁色素の色です。
ウンチの茶色はこの胆汁色素の色です。
4-2.空腸
細かく分解された脂肪のほとんどは空腸で吸収されます。
ちなみに他の栄養素の大半も空腸で吸収されると考えられています。
小腸の表面の細胞は、毛が生えているような形で波打ったような形をしています。
これを絨毛(柔毛:じゅうもう)と言います。
こうすることで表面積を広くし、たくさんの栄養を取り込めるようにしています。
分解されて細かくなったモノグリセリドや脂肪酸は、そのままでは微絨毛膜の中に取り込まれので、取り込まれやすいように膜を張ります。
この膜は胆汁酸やリン脂質でできています。
こうやって取り込まれやすい粒のような形なった状態をミセルといいます。
ミセルにならないと細胞の中に入れないのだ!
~回腸について~
脂肪はほとんど空腸で吸収されるので、回腸ではあまり脂肪は吸収されないと考えられています。
ちなみにミセルは空腸で取り込まれる時に裂けるのですが、その避けて穴の開いたミセルは回腸で回収されます。
その後ミセルは小腸で再利用されたり、排泄されたりします。
5.小腸の細胞の中でトリグリセリドが形成される
胃や十二指腸で分解された中性脂肪は、
小腸の細胞の中に取り込まれると、小胞体(しょうほうたい)という場所でまた元の形に戻ります。
わざわざ胃や十二指腸で細かく分解されたのは、
小腸の細胞に吸収されるためでした。
一度吸収されてしまえば、細かい状態である意味はなくなるので、また元に戻るというわけです。
せっかく細かくしたのにまた元に戻るなんて!
トリグリセリドという大きな物質に戻った中性脂肪は、小腸の細胞の中にあるゴルジ体(ごるじたい)の中でカイロミクロンという物質に取り込まれます。
カイロミクロンとは、「リポタンパク質」というものの一種で、簡単にいうと中性脂肪やコレステロールなどを運ぶバスのようなものです。
詳しくは→中性脂肪やコレステロールを運ぶバスの種類
ちなみにゴルジ体では、カイロミクロン以外のリポタンパク質をつくることもあります。(たとえばVLDLなど)
7.小腸から抜け出し、リンパ管へ
カイロミクロンは、リンパ管の中に入り込みます。
なお、糖やアミノ酸の場合はリンパ管ではなく、毛細血管に取り込まれます。
毛細血管が栄養を取り込むための穴は、直径60~80ナノメートルくらいしかないので、大きなカイロミクロンは中に入ることが出来ず、リンパ管から取り込まれるのです。
7.左鎖骨下静脈へ
小腸からつながるリンパ管は、上へ向かって進みます。
そしてそのリンパ管は、左の鎖骨の下の静脈(左鎖骨下静脈)に繋がっているので、中性脂肪を乗せたカイロミクロンバスはそこから血管内に入り込みます。
左鎖骨下静脈に流れる血液は、心臓に向かって進みます。
8.心臓→肺へ
心臓に入ると、血液の流れは右心房(心臓の一部)→右心室(心臓の一部)→肺動脈→肺→左心房(心臓の一部)→左心室(心臓の一部)→大動脈→全身
という流れで進みます。
9.全身へ
皮膚を切ったら血が出るように、
血管は体中に張り巡らされているので、あらゆるところを走ります。
配られた中性脂肪はどうなるの?
冒頭でも述べましたが、全身に配られた中性脂肪は、基本的には新しく生まれる細胞やホルモンの材料になったり、人が活動するためのエネルギーになったりします。
中性脂肪がたくさんありすぎると、ぜい肉として体に蓄えられます。
基本的には、食べた脂肪がすぐにエネルギーとして使われるわけではなく、一度蓄えられてから、ぶどう糖がなくなった時に使われます。
脂肪がエネルギーになる?
体が動くためのエネルギーのことをATPと呼びます。(詳しくは→ATPとは?)
ATPは基本的にブドウ糖から作られているのですが、
体内のブドウ糖が足りなくなってくると、ホルモンが働き、中性脂肪が分解されてグリセロールと脂肪酸になります。
分解されてできたグリセロールと脂肪酸は、いろいろな経路をたどってATPを作り出します。
詳しくはぜい肉からATPを作る方法
ちなみにこの時、ホルモンの影響を受けて脂肪を分解するリパーゼのことを「ホルモン感受性リパーゼ」と言います。
自分の中性脂肪の量はわかる?
健康診断で血液の検査をしたことはありますか?
血液検査の結果の【脂質代謝】や【脂質系の検査】という項目の
「中性脂肪」という項目があれば、あなたの血液中の中性脂肪の量ことを指しています。
「トリグリセリド」や「TG」という名前で書かれていることもあります。
たとえば健康診断の結果が100mg/dlだったとすると、
あなたの1デシリットル(100ml)の血液の中には、100mg(0.1g)の中性脂肪がありますよ、という意味になります。
基準値は30~135mg/dlです。
これ以上の数値になると、高すぎです。
中性脂肪の血液検査値が高かったら?
中性脂肪が高い状態が続くと動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞などを起こす可能性が高くなります。
中性脂肪の値はどうやって下げられる?
中性脂肪は、脂っこいものの食べすぎや、お酒の飲みすぎ、甘い物の食べすぎで値が上昇するので、暴飲暴食を控えるようにすれば下がります。
また食物繊維は、脂肪が小腸から吸収されるのを邪魔してくれる役割があるので、野菜をたくさん食べれば中性脂肪の上昇を抑えることができます。
それがなかなか出来ないのよね。
中性脂肪以外の脂質は?
中性脂肪以外の代表的な脂質は、「コレステロール」と「リン脂質」です。
コレステロール
コレステロールは主に動物性の脂肪に含まれています。
ラード100g中には100mg(0.1g)入っているよ。
基本的にコレステロールは脂肪酸と結合しています(結合した状態をコレステロールエステルと言います)。
脂肪酸と結合したままでは小腸へ取り込まれなので、コレステロールエステラーゼという酵素と胆汁によって分解されてから吸収されます。
小腸で吸収された後は、コレステロールのままで存在したり、再び脂肪酸とくっついてコレステロールエステルになってカイロミクロンバスに乗り込み、中性脂肪と同じルートで全身に運ばれます。
ちなみに血液中の4分の3のコレステロールは、脂肪酸と結合した状態で存在します。
リン脂質
リン脂質は主に卵や大豆製品などに多く含まれる油です。
「レシチン」という栄養素を聞いたことがありますか?
レシチンは、リン脂質の一種です。
卵1個(60g)には、脂質が約6gくらい含まれています。
卵に含まれる脂質のうちの約75~80%が中性脂肪、20%~30%がリン脂質、4%前後がコレステロールです。
(卵によって割合は異なりますが、だいたいこのような感じの割合です。)
卵はコレステロールが多いから食べちゃダメだなんて誰が言い出したのでしょう?😕
リン脂質もそのままでは小腸に吸収されないので、ホスホリパーゼという酵素と胆汁によって分解されてから吸収されます。
分解されたリン脂質は、リゾリン脂質と脂肪酸に分けられます。
そして小腸で吸収されたあとは、またリン脂質に戻ります。
リン脂質は、ミセルの膜をつくるなど、主に油が体になじみやすくするように物質を加工する役割があります。
ミセルはリン脂質があってこそできるもの!
普通ではない吸収のされ方をする中性脂肪もある
普通の中性脂肪は分解後、また中性脂肪に戻ってリンパ管に吸収される、と説明しましたが、実は分解後に中性脂肪に戻らずに小さな毛細血管に入り込む脂肪酸が存在します。
それが中鎖脂肪酸です。
中鎖脂肪酸とは、炭素を8~10個持っている脂肪酸のことをいいます。一般的な脂肪酸は炭素を11個以上持っているので、普通の脂肪酸よりも小さい脂肪酸ということになります。
普通の僕(長鎖脂肪酸)よりも小さい僕が、中鎖脂肪酸。
中鎖脂肪酸は分子が小さく水に溶けやすい性質のため、糖などと一緒に毛細血管の小さな窓から門脈へ入り、直接肝臓へたどり着くため、他の脂質よりも早く吸収されます。
体が小さいので、リンパ管から心臓をたどるコースををショートカットできる、というわけです。
そのため、一般的な中性脂肪に比べて4~5倍の速さで吸収され、すぐさまエネルギーになり、しかも体脂肪として蓄積しにくい性質、というちゃっかり者な脂肪酸なのです。
近道を行く!そして脂肪を蓄えない中鎖脂肪酸!
食品からとれる中鎖脂肪酸は主に、
・オクタン酸/別名:カプリル酸(炭素数8個)
・デカン酸/別名:カプリン酸(炭素数10個)
の二つです。
ただし、食品中にある脂肪酸のほとんどは長鎖脂肪酸(普通の脂肪酸)です。
中鎖脂肪酸が比較的多く含まれる食品は、ココナッツ油、バター、牛乳、チーズです。
ただし、「比較的」多く含まれるだけで、決して上記の食材に含まれる脂肪のすべてが中鎖脂肪酸というわけではありません。
もちろん上記の食材には長鎖脂肪酸からできる中性脂肪も大量に含まれているので、食べすぎれば太ります。
「中鎖脂肪酸が入っている」という説明が書いてあるサラダ油なども、たっぷりと長鎖脂肪酸が含まれているので、その油を食べても太らないというわけではありません。
実は中鎖脂肪酸は1割しか入ってませ~ん。
油と脂と脂質と脂肪の違い
アブラに関する語句はいろいろあってちょっと紛らわしいので、簡単に説明しますね。油とは、サラダ油とかオリーブ油とかのサラサラした液体状のアブラをいい、
脂とは、お肉の白い部分のようなラードや、バターなどの動物性で固形状のアブラのことを言います。
この二つをまとめて油脂や脂肪と言います。
つまり、油脂と脂肪は同じ意味です。
脂質とは、生体成分(生きているものから作られる物質)のうち、水に溶けないものの総称のことです。つまり、生体成分であれば、油も脂も油脂も脂肪も脂質です。植物も生きているので、植物からとれる油も脂質になります。
まとめ
・私たちが食品からとるアブラのほとんどは「中性脂肪」という成分でできている。
・「中性脂肪」はグリセリドと脂肪酸が結合したものを指すが、ほとんどがグリセリド1つと脂肪酸3つが結合した「トリグリセリド」という物質である。
・なので、「中性脂肪」のことを「トリグリセリド」として考える人が多い。
・「中性脂肪」は体の中に入ると、主に胃や膵臓から出てきたリパーゼという消化酵素によって細かく分解される。
・「中性脂肪」が分解されてできた「グリセロール」や「脂肪酸」は、ミセルという粒に包まれながら小腸の中に入り込む。
・小腸の中でも特に空腸で多く取り込まれる。
・小腸の中で、再び合成されて「中性脂肪」に戻り、カイロミクロンというリポタンパク質の中に入り込む。
・カイロミクロンに入った「中性脂肪」は、リンパ管に入り、その後静脈に流れ着き、そこから全身へ送られる。
・全身に送られた「中性脂肪」は、新しい細胞の材料になったり、エネルギーになったりするが、余った分は体脂肪(ぜい肉)として蓄えられる。
・私たちが食品からとるアブラのほとんどは「中性脂肪」という成分でできている。
・「中性脂肪」はグリセリドと脂肪酸が結合したものを指すが、ほとんどがグリセリド1つと脂肪酸3つが結合した「トリグリセリド」という物質である。
・なので、「中性脂肪」のことを「トリグリセリド」として考える人が多い。
・「中性脂肪」は体の中に入ると、主に胃や膵臓から出てきたリパーゼという消化酵素によって細かく分解される。
・「中性脂肪」が分解されてできた「グリセロール」や「脂肪酸」は、ミセルという粒に包まれながら小腸の中に入り込む。
・小腸の中でも特に空腸で多く取り込まれる。
・小腸の中で、再び合成されて「中性脂肪」に戻り、カイロミクロンというリポタンパク質の中に入り込む。
・カイロミクロンに入った「中性脂肪」は、リンパ管に入り、その後静脈に流れ着き、そこから全身へ送られる。
・全身に送られた「中性脂肪」は、新しい細胞の材料になったり、エネルギーになったりするが、余った分は体脂肪(ぜい肉)として蓄えられる。