ケトン体って結局何なの?どうやって作られる?なぜ脳のエネルギーになるの?

かつては「糖は唯一の脳のエネルギー源」と知られていましたが、今はケトン体も脳のエネルギー源としても知られています。

では、ケトン体はどのようにして作られるのか?見ていきましょう!

🔶ケトン体

ケトン体とは

※このページでは「ケトン体」そのものについて説明していきます。
糖質制限食とケトン体の関係についてはこちらからどうぞ。








ケトン体とは?


ケトン体

体内で生成される、βヒドロキシ酪酸(べーたひどろきしらくさん)、アセト酢酸(あせとさくさん)、アセトンの三種類の総称をケトン体といいます。

一般的に「ケトン基(-CO-)を持つ物質」といわれていますが、厳密にはβヒドロキシ酪酸だけはケトン基を持っていません。

体内のエネルギー源が足りないときに脂肪酸やアミノ酸からケトン体が作られ、エネルギーの素を作ります。



アセト酢酸とは?


アセト酢酸

まずはアセト酢酸から説明しますね。

化学式は「C4H6O3」

アセチルCoAが変化してアセト酢酸になります。

アセチルCoAからアセト酢酸

その後アセト酢酸は、酵素(3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ)によってβヒドロキシ酪酸βヒドロキシ酪酸顔bに変化します。

βヒドロキシ酪酸になる時、NADH2から水素(H)を2つもらいます。
2トレーナーHb2トレーナーHb



アセト酢酸は酵素を使わなくても変化することができます。

自力ではアセトンアセトンに変化します。

非常に不安定な物質なので、体内でアセト酢酸が作られても、ずっとアセト酢酸のままでいることはありません。



βヒドロキシ酪酸とは?


β-ヒドロキシ酪酸

ヒドロキシって覚えにくいので、ヘドロ式と覚えてます。すみません(^^;

「β-」と「3-」どちらでもかまいません。

化学式は「C4H8O3」です。アセト酢酸から水素(H)を受け取ったので、アセト酢酸よりも水素が2個増えてますね。

βヒドロキシ酪酸は、アセト酢酸アセト酢酸アイコンに戻ることができます。

このとき、アセト酢酸アセト酢酸アイコンβヒドロキシ酪酸βヒドロキシ酪酸顔bになる時と同じ酵素が使われます。

アセト酢酸アセト酢酸アイコンに戻る時、水素Hを2つ切り離して、NADに渡すので、NADH2が生まれます。



βヒドロキシ酪酸とアセト酢酸





アセトンとは?


アセトン

アセト酢酸アセト酢酸アイコンが自力でなれる物質であると説明しました。

化学式は「C3H6O」です。アセト酢酸からCが1個Oが2個減りました。

そうです。CO2です。つまり、アセト酢酸から二酸化炭素が出てきたためアセトンがつくられました。

アセト酢酸とアセトン


除光液を使ったことはありますか?





マニキュアを落とすときなどに使うやつです。

シールをはがした時に残った跡や、プラスチックに書いた油性マジックのインクを落とすときにも使えます。

この除光液の主な成分はアセトンです。

アセトンは油などを溶かす性質があります。

また、揮発性があります。

除光液をティッシュにつけて少し置くと、すぐに蒸発してしまいます。

人の体でもこのアセトンは作られます。揮発性があるので、呼気から出てきます。

除光液の独特なツーンとした匂いはアセトンの匂いです。

呼気からアセトンが出ると、ツーンとした口臭になります。


アセトンは最終代謝産物なのでエネルギーにはできません。



<ケトン体の変化まとめ>

ケトン体の変化まとめ

・βヒドロキシ酪酸とアセト酢酸はどちらにも変化ことができて、その時には水素2個がやり取りされている。(βヒドロキシ酪酸の方が名前も水素の数も2個多いと覚えます。)

・アセトンができる時はアセト酢酸から二酸化炭素が抜けてできる。





アセトらくさんなのか、アセトさくさんなのか迷った時


βヒドロキシらくさん?βヒドロキシさくさん?

なんだか名前が紛らわしくて、こんがらがりますよね。

そんな時は、「汗と柵さん」を思い出してもいいですが、私はこんな覚え方をしました。

・アセトのセがSE、サクサンのサがSAなので、Sが共通している

・ヒドロキシのロがRO、ラクサンのラがRAなので、Rが共通している


そう考えれば、アセト…?と迷った時にSだからサクサンだな!とわかります。



ケトン体がつくられる場所は?


肝臓のミトコンドリアのみです。

カンゾウシティ

ポケモンの町の名前っぽく書いてみましたw

ただし、肝臓では直接エネルギー源として使うことができないので、筋肉や脳へ運ばれて使われます。



なぜケトン体がつくられるのか?


クエン酸回路に入れないアセチルCoAがケトン体に変化

アセチルCoAが何らかの理由でたくさんつくられ、それがクエン酸回路(TCAサイクル)で消費しきれないときに、あふれたアセチルCoAは何度か変化した後にケトン体に変化します。

→クエン酸回路って?

アセチルCoAがたくさんつくられるタイミングは、体内の糖分が足りないときや、飢餓(すごく空腹)のときです。



アセチルCoAの素になるものは?


アセチルCoAは、体内の栄養素から作られます。

通常、体内に糖分があるときは、解糖系でグルコースからピルビン酸になって、それからアセチルCoAになります。

→解糖系って?

しかし、ケトン体がつくられる時は主にグルコースが足りていないときです。

なのでグルコース以外の栄養素からアセチルCoAをつくらなければなりません。

アセチルCoAをつくることができる栄養素はいくつかあるので紹介します。


中性脂肪からアセチルCoAになる


ぜい肉など、体に蓄えられている中性脂肪は、分解されると脂肪酸とグリセリドになります。


脂肪酸
脂肪酸です!


脂肪酸はβ酸化を受けていくつか形を変えた後にアセチルCoAになります。

→β酸化って?


タンパク質からアセチルCoAになる


食事からとったタンパク質や、体の筋肉などのタンパク質が分解されるとアミノ酸になります。

ヒトの体でつかわれるアミノ酸は20種類があるのですが、その中でもケトン体になるアミノ酸はケト原性アミノ酸と呼ばれています。

それは、チロシン、フェニルアラニン、リシン、ロイシン、トリプトファン、イソロイシンです。

※トレオニンに関しては教科書によって見解が違います。

チロシン、フェニルアラニン、リシン、ロイシン、トリプトファンは、アセトアセチルCoAになってからアセチルCoAになります。

アセトアセチルCoA

イソロイシンは、直接アセチルCoAになることができます。








アセチルCoAからケトン体がつくられるしくみ

アセチルCoAからケトン体がつくられる過程をみていきましょう。

①アセチルCoA


アセチルCoAの汗


下やじるし2-40-205
アセチルCoA(C23H38N7O17P3S)は、

酵素(アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼ:チオラーゼ)によって

アセトアセチルCoAに変化します。



②アセトアセチルCoA


アセトアセチルCoA


下やじるし2-40-205
アセトアセチルCoA(C25H40N7O18P3S)は、

酵素(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMG-CoA)-CoAシンターゼ)によって

アセトアセチルCoAに変化します。



③ヒドロキシメチルグルタリルCoA(3-ヒドロキシ-3-メチルグリタリル-CoA、HMG-CoA)


ヒドロキシメチルグルタリルCoA


ヒドロキシメチルグルタリルCoA顔
ヘドロ式になっても俺イケメン!



下やじるし2-40-205
ヒドロキシメチルグルタリルCoA(C27H44N7O20P3S)は、

酵素(3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMG-CoA)-CoAリアーゼ)によって

アセト酢酸に変化します。



④アセト酢酸


アセト酢酸


下やじるし1-35-150
アセト酢酸が変化する先は…




⑤アセトン


酵素の力をつかわずに、アセトンと二酸化炭素になる場合と…

アセトン二酸化炭素くん





⑤βヒドロキシ酪酸



下やじるし1-35-150
酵素(3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ)によって

βヒドロキシ酪酸に変化する場合がありましたね。


β-ヒドロキシ酪酸


無事にケトン体になれました!!



ケトン体からエネルギーがつくられるしくみ

では、ケトン体からどうやってエネルギーがつくられるのかという話です。

ケトン体からエネルギーがつくられるパターンはいくつかあります。

ケトン体がまたクエン酸回路(TCAサイクル)に戻る場合




アセト酢酸アセト酢酸アイコンは肝臓でつくられると、血液中に入り込み、体の各細胞のミトコンドリア内へ流れます。

するとクエン酸回路のスクシニルCoAからCoAがはずれ、てアセト酢酸にくっつき、アセトアセチルCoA(C25H40N7O18P3S)に戻ります。

そしてアセチルCoA(C23H38N7O17P3S)に変わりクエン酸回路に入り込みます。

クエン酸回路はアセチルCoAから始まりましたよね。

→クエン酸回路

クエン酸回路まとめ


スクシニルCoAからCoAが外れたらコハク酸が残ってエネルギーがつくられる場合


スクシニルCoAの化学式はC25H40N7O19P3Sです。

スクシニルCoAから外れるCoAはC21H36N7O16P3Sです。

つまり、スクシニルCoAからCoAが外れたら、C4H6O4が残ります。

さて、C4H6O4化学式の物質は何でしょう!

それはずばり、コハク酸なんです!

8 コハク酸

残されたコハク酸はクエン酸回路に入って代謝されます。

クエン酸回路でコハク酸からオキサロ酢酸になるまでには、FADH2、NADHが生まれます。これらは電子伝達系でATPの源になる物質です。

→電子伝達系って?







ケトン体がつくられるときに生じた物質からエネルギーがつくられる場合


最初のほうで、βヒドロキシ酪酸βヒドロキシ酪酸顔bから水素が2個外れてアセト酢酸アセト酢酸アイコン
になるときにNADH2が生じると述べましたよね。

もちろんここでつくられるNADH2もエネルギーの源になります。



グルコースとケトン体が脳のエネルギー源になるしくみ


脳関門に入れるケトン酸-脂肪とアミノ酸は入れない


ヒトの脳関門という脳の管は、とても狭いため、エネルギー源になるものは基本的にはグルコースしか通していません。

「グルコースは脳のエネルギー源」といわれているのはそれが理由です。

アミノ酸や、脂肪を運ぶリポタンパク質は、体が大きいため、脳関門を通過することができないので脳のエネルギーになることはありません。

脳関門を通過したグルコースは、脳の細胞質で解糖系によってATPがつくられ、エネルギーが発生し、脳を働かせています。


体内のグルコースがなくなると肝臓でケトン体がつくられます。

つくられたケトン体は血液中に入り、脳へ流れます。

脳内のミトコンドリアへ入り込んだケトン体はそこでアセチルCoAに変わり、クエン酸回路(TCAサイクル)へ入って、エネルギーの源をつくりだす、というわけです。


まとめ
・ケトン体とは、βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの総称。

・βヒドロキシ酪酸=アセト酢酸+H2

・アセト酢酸=アセトン+CO2

・ケトン体は肝臓のミトコンドリアでつくられる。

・ケトン体はアセチルCoAがクエン酸回路で消費しきれないときにつくられる。

・体内の糖分が足りなくなったときに主に脂質からアセチルCoAがつくられる。

・つくられたケトン体はまたアセチルCoAになってクエン酸に入っていく。

・ケトン体がつくられるときにはNADH2などのエネルギーの素もつくられる。

・ケトン体は体が小さいので脳の管の中に入っていき、脳のエネルギーになることができる。



アセト酢酸 顔
アセト酢酸の別名は、3-オキソブタン酸って言うんだよ~。




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